調査・診断
火害調査
火災による建物躯体の劣化程度を調査します
コンクリート造や鉄骨造等の構造物が火災に遭っても、通常は簡単な補修により継続使用が可能となります。ところが、火災の規模が大きく構造体の受ける温度が高いと、コンクリートや鉄骨の強度が低下したり、鉄筋とコンクリートの間やボルトに緩みが生じて分離したりします。
火害調査は構造体の受けた温度を推定することが重要となり、目視調査で燃え残った物や構造体の表面から得られる情報で受熱温度を推定するとともに、適切な試験(コンクリート強度試験、中性化深さ試験等)を実施して被害の等級を判別し、補修方法の提案まで行います。
詳細
火害を受けた建物の調査方法
火害調査は構造体の受けた温度を推定することが重要です。
目視調査では燃え残った物や構造体の表面から得られる情報で受熱温度を推定するとともに、適切な材料試験を併用して被害の等級を判別します。
(1)目視による調査
コンクリート構造部材
・外観上の被害(ひび割れ、欠損、たわみ)
・コンクリートの変色状況やすすの付着状況
鉄骨部材
・架構の変形
・耐火被覆塗料の状態
コンクリート以外の材料
・各種部材および仕上げ材料の損傷状況
(窓枠、電球、配線、内・外塗料など)
(2)診断機器等による調査
○シュミットハンマーによる反発硬度試験
コンクリート表面の反発硬度を求め、健全部との比較評価をします。
○中性化試験
コンクリートが熱を受けると水酸化カルシウムが分解されて中性化します。その性質を利用し受熱温度を推定します。
○圧縮強度試験
○静弾性係数試験
コアサンプルを採取してコンクリートの強度低下を確認します。
○UVスペクトル分析
コアを輪切りにしたサンプルで、深さ方向の温度分布を推定します。
○鋼材の引張試験
鉄骨、鉄筋部材のサンプルを採取し、引張強度、伸びの規格値を満足するかを調べます。
○振動試験
床や梁などの振動を実測し、微小振動レベルにおける構造特性を調べます。
○載荷試験
重量物を載荷し、油圧ジャッキを用いて集中荷重を与え、たわみを測定します。
○鋼材硬さ試験
鋼材の硬さを測定し、鋼材の強度を推定します。
○高力ボルトの強度
高力ボルトの引張試験、ミクロ試験
○柱・梁たわみ測定
下げ振り・水糸、測量で架構の変形量を測定します。
火害からの回復と対処方法
火害から回復
火害を受けた建物のコンクリート強度は、500℃以下の受熱であればある程度まで回復しますが、浮きや中性化、鋼材の残留変形は適切な補修や補強を行わないと安全性や耐久性に悪い影響を与えます。建物を過信して調査しないと、地震などの非常時に不測の事態を引き起こすことが考えられます。反対に過剰に被害を評価して、不必要な建て替えや補強をすることも考えられます。
当社では、構造技術者を中心に火害の等級を十分検討して、下記のような構造物の継続使用に必要で十分な補修・補強案を提示します。
・コンクリートの変色状況と受熱温度の関係
変色状況 | 温度範囲 ℃ |
表面にすす等が付着している状態 | 300未満 |
ピンク色 | 300~600 |
灰白色 | 600~950 |
淡黄色 | 950~1200 |
融解する | 1200以上 |
RC造 コンクリートが500℃以上に加熱されると強度低下する。
S造 鋼材が600℃以上に加熱されると強度低下し、約720℃を超えると材質が変化する。
火害への対処方法
○中性化の進行
アルカリ性付与材の塗布、中性化防止層の形成
○小規模な断面欠損や脆弱化した部位
断面修復工法
○大断面の修復
プレパックドコンクリート工法
○ひび割れ、浮き部の補修
注入工法
○床や壁のすす汚れ
効率的な除去法、美装性の回復技術
○床や壁のすす洗浄液、燃え残り
産業廃棄物としての処理工法